BA-1 AI・機械学習にできることは何か?

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BA-1 AI・機械学習にできることは何か?

「AI」や「機械学習」については話題になることが昨今多いですが、それらに何ができるのか、何が得意であるのかについて、正しく理解されずに機械学習プロジェクトが計画されたり勧められたりする状況が散見されます。ここでは、AIや機械学習をビジネスに生かすために、それらがカバーする範囲を正しく理解することを目的としています。

 

AIとは、Artificial Intelligence(人工知能)のことで、伝統的に人間の知能を必要としたものをコンピューターにより行うことを言い、機械学習を含めた広い概念で、実は専門家や研究者の間でもAIの定義は明確に統一されていません。機械学習は、Machine Learning(ML)の日本語訳で、コンピュータのアルゴリズムを用いて、インサイトを発見したり、関係性を決定したり、将来のトレンドの予測を行ったりします。従来はドメイン知識に基づいてルールを設計していたものも、機械学習により数学モデルとして設計され、高度な予測が可能になりました。

 

機械学習の概念そのものは目新しいものではないですが、近年様々なデータを利用できるようになったことに加え、コンピュータ性能が飛躍的に向上したことにより、データをビジネスの強力な武器にできるようになりました。ガートナーによると、2021年には、グローバル規模で、AI関連で2.9兆ドルのビジネス価値と62億時間分の労働者生産性を生み出すと推定されています。テスラやスペースXの創業者であるイーロン・マスクは、AIの競争優位性について次のように述べています。「企業はAIを構築するために競争しなければなりません。そうでないと競争優位性を失います。本質的に、競合企業がAIを構築している中でAIを構築しようとしなければ、競合企業に打ちのめされるでしょう。」

 

機械学習について、「DataRobotではじめるビジネスAI入門 [DataRobot Japan 公式ガイドブック]」には、以下のように記載されています。

機械学習技術の革新的な点は、経験のある人間がその知見に基づいて手順を教えなくても、
アルゴリズムが過去データから自ら傾向を学び、未知の状況に対する予測を実行可能なプログラムとして
提供してくれる点です。これを専門的には「モデル化」と呼びます。
データ活用はデータの蓄積とデータの可視化(BI:Business Intelligence)によって、
これまでは過去に起こった事象への理解を深めるために使われることが主流でした。
データを見ることによって、経験的には捉えることの難しかったパターンなどを明示化することができるようになります。
そこからの学びに基づいて人間はより精度の高い意思決定を行うことができるようになるため、
そのような活動の有用性は企業でもよく理解されており、
よりリアルタイムでデータを見るためのダッシュボード化などが進んでいます。
AI の利用は BI の利用を否定するものではありません。
むしろ、データを可視化することはデータ活用においてはとても基礎的なケイパビリティで、
AI の活用以前にすべての企業で行われるべきことです。

一方で、AI は上記で人間が行っていたデータに基づく先の意思決定をするプロセスまでを行ってくれるのです。
つまり過去を理解するだけでなく、まだ見ぬ未来を予測してくれます。

ここでは、AIの中でも主に機械学習についてご説明します。機械学習はスピードアップと大量の処理に長けておりますが、一方でリアルな問題を解くのは引き続き人間であります。機械学習は魔法の道具ではありません。正しくビジネスに適用するには、ビジネス課題を正しく理解した上で、適切なターゲットを決定する必要があります。データ・AI 活用の技術的障壁が取り除かれ、誰もが AI を使える時代に近づくにつれて、技術的詳細以上に重要視されているのが、技術適用の対象となる事業や領域に対する知識・経験です。このような知識は「ドメイン知識」とも呼ばれます。事業内容を深く知っている人ほど、その中で取得されている、または取得可能となるデータに関しては土地勘を持っています。また事業の成り立ちや、関わる人達について知っていることにより、適切な課題の発掘や設定を行い、実用的観点から価値の高い技術利用ができるようになります。

 

機械学習が解決できる問題は、大きく分けると次のタイプにまとめることができます。

  • 教師あり問題:教師ラベル(正解データ)からパターンを学ぶことができ、その学習から行動に移せるインサイトを得ることができます。問題には大きく分けて、分類問題と連続値問題があります。
  • 教師なし問題:教師ラベル(正解データ)がない中で、データに共通するパターンをもつグループを発見したり、データの背後に存在する本質的な構造を抽出するために用いられ、クラスタリングなどがあります。

 

最後に、機械学習には向かないテーマもあり、留意する必要があります。

「DataRobotではじめるビジネスAI入門」には次のように記載されています。

例えば、次に出るサイコロの目を当てるような完全にランダムな問題の予測はできません。
また一流の専門家でも当てることの困難な地震や自然災害の発生などは、
不可能ではないとしても機械学習にとっても非常に難易度の高い問題であることが多いため、
それなりの覚悟をして取り掛かる必要があります。また、AI の性能はデータの質に強く依存します。
必要なデータがまだしっかり取れていない場合は、AI の精度にもそれが反映されてしまいます。
仮に取得することができていても、その信頼性が低い場合などには、同様に精度に影響を与えます。

また、予測対象がデータ上で極端に偏っている場合も問題です。
例えば、購入する人かどうかを当てたい場合には、購入した人としなかった人両方のデータが必要となりますが、
購入した場合にしかデータが細くできない、というようなケースには問題があります。
また両方のデータが取れていたとしても、まだ新製品のため購入した人が著しく少ない時などには、
データの蓄積を待つ必要がある場合もあります。

全てのビジネス課題がAIや機械学習に向いているわけではないので、機械学習をビジネスに適用する際には、上記のようなデータの質・量および予測する対象の性質に加え、どのように予測値が利用されるか、それを有効に利用するリソースがあるかなど、ビジネス要件も踏まえて総合的に判断する必要があります。

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最終更新日:
‎07-30-2020 07:55 PM
更新者:
寄稿者